第11章 ☆Story9☆ 試合観戦
「はい。」_チラッ
「ぇ……!」
(なんで……)
ゆりがポカンと口をあげながら憲吾を見ていると……
「……(微笑)」
「っ……」
憲吾はゆりに向け小さく微笑んだ。
「……。」
そして口を動かし……
『ありがとう。』
確かに憲吾の唇は「ありがとう」と動いた……
そう言っているんだと、ゆりは感じた。
「っ……三船さん……(微笑)」
(三船さんの笑うところ、初めて見た……それに、あんな優しい笑顔で……
私を見てくれた……)
『ふふ……よかったね、ゆりちゃん(微笑)」
「っ……うん……!」
(やっぱり、私……好きなんだ……三船さんのこと……こんな気持ち、初めて……もっと、
あの人の笑顔が、見たい……)
そしてすぐに第2ラウンドが始まった。
憲吾side
大事なワンセット目を取った俺、だが油断はできない。
あいつも、まだまだ力が残っている……ここは確実に、勝負を決める……!
「……ふぅ……」
大きく深呼吸をする憲吾。
「よし……行って来い!!」
「あぁ……」
立ち上がる憲吾、憲吾は再びゆりがいる方へ視線を向けた。
目を向けてみるとゆりはまだ立ち上がった様子でこちらを見ていた。
「……。」
(あの目を見ちゃ……負けるわけには、いかねぇよな……
せっかく、来てくれたんだ……ここは確実に勝たないとな……)
視線を聡に向け直す憲吾。
「……このセットで、勝負を決めてやる……」
「そう簡単に、勝たすって言ってないでしょ……次は俺が取る。
まだ俺は……半分の力も出してないんだからなぁ……」_ゴゴゴゴゴ…
「っ……!」
(なんだ……この、気迫は……っ!?あれは……)
「っなんだ!?」
神戸もすっかり驚いた様子で聡を見ていた。
そして吾郎もまた、
「っなんで……
後ろに狼がいんだよ!?」