第8章 ☆Story6☆ ママの命日
「……。」
「……三船さんは2回も私のことを助けてくれたから……それで、
ちゃんとお礼とか言えてないなぁって……」
「でも、気になってるんじゃねぇのか?
……なんとなく、見てるとわかるよ。誕生日の時も……」
「っ……」
「でなきゃ、抱きついたりしねぇだろ……」
「なんで、そう思うの……?
っあの時は、班田って人があまりにも怖かったから……それでつい……」
「……お前の、ママも似たようなこと経験してるからよ……」
「っママが……?」
「……まだ、俺らが付き合い始めて間もない頃、俺らは動物園に行ったんだけどよ……
その日の待ち合わせの時、あいつが早過ぎて、変な男どもに絡まれてな……」
「っママは、大丈夫だったの……?」
「直接手をかけられることはなかったけど、だいぶ怯えていたよ……
もっと俺が早く来ていれば、あんなことにはならなかっただろうけど……」
「……。」
(パパ、なんで急に昔のこと話すんだろ……パパが、一番話したくない話のはずなのに……)
「俺が来て、その男どもを追い払った後……まぁ、ついこないだのお前みたいに抱きついて来た……
その時と、ちょっと似てるなって思ってな……」
「そんなことが、あったんだ……でも、急にママの話をしてきてどうしたの?
パパ、ママの話なんて……」
「なんで、だろうな……お前を見てると、どうしてもママを思い出す……それに、」
「……?」
「っいや、なんでもない……最後のは俺の独り言だ。
……戻るか、そろそろ。他の人も、待ってるだろうしな……」
「うん、そうだね。……にしても、夕日綺麗だね……」
「そうだな……でも、そろそろ日が沈む……戻るぞ。」
「はーい」
こうして二人は庭園を後にし、家の中に入った。