第5章 嘘つきは大嫌い【今吉翔一】
今吉side──────────---
《柚井さんって、優しいよねぇ!》
《ほんとほんと。
可愛いし、成績も良いし、運動神経も良いし────》
───ああいう人を、
非の打ち所が無いって言うんだよね~っ!
ふと耳にしたとある女子の名前。
・・・なんか、デジャヴやな。
その女の名前は、至るところで耳にする。
頭が良い、
運動神経が良い、
頼りになる、
優しすぎる・・・。
デジャヴやからかもしれへん。
期待と好奇心が募っていった。
────・・・化けの皮、剥がしたるわ。
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運が良いんか悪いんか、
そいつの担任はワシやった。
確かに落ち着いてるし大人らしい・・・
だけど、どこかアイツの匂いがプンプンしとった。
「・・・んーじゃあ次の問題・・・
・・・柚井、お願いしてええか?」
『はい』
昼後の授業やと言うのに、
柚井は寝ていた素振りも見せなかった。
さっと立ち上がって、
その髪を靡かせる。
『・・・・・・』
暫く続く沈黙。
その姿をじっと見とったワシは、
そいつの手が模範解答を書いていくのを見続けた。
『・・・はい』
カタ、
とチョークが置かれ、柔らかそうな笑みを浮かべた女は席に座る。
「おー正解や。流石やな」
おうおう、見とったで。
───あんたが一瞬笑ったのを。
このあと自分が褒められる、
そういうのを前提にしているような笑みやった。
怖い女やな、あんた。
「んじゃあ、こんな感じで解いてってや」
適当じゃーん!
そんな声が響く。
・・・適当? 言葉の綾(あや)やろ?
────適任やんけ。ワシが。
寝ても良い言うとんのや。
センセイ教室出るんやで?
・・・お前らにとって最高やないか。
つくづく、こいつらの言うとることは毎回矛盾しとる。
・・・まぁ、そんなもんやな、高校生なんて。
矛盾だらけの毎日が、楽しいんやな。