第4章 出逢うことの無かったふたり【火神 大我】
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火神side
ウインターカップ前夜・・・
「じゃあ、今日はゆっくり休むこと!」
カントクの声が体育館に響き渡って、先輩達もおのおの散らばっていく。
・・・あいつ、どうしてるかな。
・・・あいつらも、こんなふうに話してんのかな。
俺にはもう、あいつを知る術が無ぇ。
もう、俺たちが会うことはねぇかもな。
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維side
「後はお前らの全てを出し切るだけだ!!!」
「「「ウッス!!!」」」
監督の声が広い体育館に響き渡る。
選手の士気も高くて、これなら順調に行けるかもしれない。
・・・いや、『かも』じゃない。
行くんだ、全員と。
高校最後の大一番。
私がみんなに出来る、最後の仕事だ。
「・・・維?」
『ななな何ッ!?』
氷室に名前を呼ばれ、慌てて振り向く。
この氷室さんとは、何故か距離があったものの、今は何故か元通りになっている。
・・・全部、火神のせいだな・・・
「ふっ・・・・・・明日、頑張るよ」
・・・笑われた。
『・・・うん。私だって頑張るからね』
「・・・あぁ」
「維ちーん、お菓子~」
『はい紫原くん。あと食べ過ぎないでね』
「今更だよ、維・・・」
大事な試合の前なのに、何ら変わらないみんなに、思わず笑みが零れる。
『このままが、いいなぁ・・・』
引退したくない。
もっとみんなのバスケが見たい。
「勝てばいい話でしょ~?」
『・・・・・・っぷ・・・っ』
「え」
『っはははは! っはは・・・!
っ確かに・・・っ、そうだね・・・』
簡単な話だ。
勝てばいい。
勝てば、もっとバスケが出来る。
私たちが出来ることは、決まってるんだ。
─────火神も、こうやって笑ってるのかな。
────・・・あの日から、私と火神の入れ替わりはなくなった。
なんで入れ替わっていたのか、それも全く分からない。
でも・・・
何故か、私と火神はもう二度と、会えない気がした。