第17章 (日)夏幻
その後ろ姿をしばらく見つめる。
不意に、不思議な気分になった。自分が何処にいるのかわからなくなったような、夢を見ているような気分。
菊さんすらも、私の夢の産物のような。
「…そんなわけないけどね」
呟きながら、目の前のお茶を見つめ耳を澄ませてみる。
本当に静かだ。周りの音が聞こえない。現実がこの時だけ遠ざかっているようで、ふわふわした気持ちになる。
膝の上のぽちくんの体温が温かかった。
帰ったら誰かにここの事を話したい。けれど、言えばきっと「連れてって」と言われるのだろう。
いずれそうなるのならば、もう少し一人でこの雰囲気を味わいたい。
どう考えてもここは、大人数で来るよりも一人で来る方が落ち着く場所だ。
次はいつ来ようか、と無意識のうちに考えていた。
2014/