第14章 (日)鬼ごっこ
「あっロヴィ!」
「おー璃々、おは…うわっ!」
「匿って!」
くるんを見つけた私は挨拶もそこそこに超速で後ろに回りこみ、ロヴィの背中に身体を隠した。
走りっぱなしで息が荒い。どうしたんだと怪訝な顔をするロヴィを丸無視して油断なく菊を待つ。
すぐに菊は追いついてきて足を止めると、ロヴィを挟んで私と睨み合った。
菊の息はほとんど乱れていない。何か私の体力が無いと言われたようで悲しい。
「??? おい…何してんだよ」
「気にしないで」
「気にするっつの」
「ふふ…璃々さんいいんですか?そんなに簡単に他人を頼ってしまって」
にやりと笑いながら言う菊に、私はとっさにロヴィの肩を掴んでいた手を離した。
そうだ。菊は味方を三人つけているんだった。
まさか…ロヴィが……
「ろ…ロヴィは違うよね?」
「だから何……あやっべチャイム!じゃな璃々!今日も可愛いな後でお茶しようぜ!」
響くチャイムにロヴィは顔を上げ、付け足しのような世辞を言うと走り出してしまった。
そんなおまけみたいに言われるなら別に言わなくていいのに。
残された私達は一瞬顔を見合わせる。先に動いたのは菊だった。
「私達も行きましょう。授業、遅れてしまいますよ」
「…もう捕まえない?」
「チャイム鳴りましたしね。…何故そんなに離れているんですか」
「捕まえないとか言っておいて捕まえられたら嫌だなぁと」
「そんなに信用が無いですか私は。寂しいものです」
「…………」
私は黙って菊に走り寄った。でもやっぱり少し警戒して離れてしまう。
それを見て、菊は「油断ありませんね」と苦笑した。
そして廊下の先を見て、唇の先で呟く声。
私には届かずに消える。
「触れられないとは辛いものですね…」
2014/
(黒日出しながらじわじわ追い詰める予定だった)