第14章 (日)鬼ごっこ
翌日。
「逃げないでください璃々さん!」
「そしたら捕まるじゃん!」
私は廊下を出来る限りのスピードで走っていた。
必死に逃げる私、後ろには菊。廊下は走らないという言葉はどこ吹く風だ。
多分障害もなしに追いかけっこしたら菊の方が足早いんだしすぐ負けるんだろうけど、廊下にはまばらに生徒がいる。
菊は人が良いから話しかけられると何かしら返して、それに時間を食って私に追いつけずにいた。
「もー!廊下は走らないんじゃなかったの!?」
「言葉で惑わす作戦だったのですが…璃々さんいい勘してますね、あんなにすぐ逃げられるとは」
「だって目が怖かったもん!」
菊の目は朝から生き生きしていて怖かった。
どう出るんだろうと思いながら挨拶をすると、おはようございますの言葉と共に手を掴まれたのだ。
反射的にそれを振り払って、じりじり後ずさって。
どうしたんですか、と言いながらまた菊が触れて来ようとするから、私は逃げ出したのだった。