The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第11章 Floor B3 ー地下3階ー
「……おやめください。
主人の無礼は、お詫び致します。
……ですが、
その態度はあまり紳士的とは言えませんね。」
俺は"しつじ"に手首を掴まれた。
「……ちっ。」
俺は舌打ちをして、悠の頬から手を離す。
と、同時に、俺の手首からもしつじの手が離れた。
悠は、自分の頬をさすりながら
俺の方をじとっと不服そうに睨みつけている。
……ただ、
言いたいのは……。
悠の笑顔を見ていると、
胸が痛い。
……心臓?
…………わかんねぇけど…。
今まで、"殺したい"としか思えなかった他人の笑顔に、
別の感情が芽生えて、胸の中でモヤモヤと渦巻いている…。
どうしてだか、
悠の笑顔が、俺に向けられることを望んでいる自分がいる。
悠には、笑っていて欲しいと思う自分がいる……。
「…気持ちわりぃ……。」
……それが、
得体の知れないその感情に対する、
俺の素直な感想だった。