第2章 ドS彼氏、本性現れる
「…チッ」
彼の舌打ちが聞こえ私は目を開けると、少し不機嫌そうな彼が視界に入る。
こんな表情の彼は見たことがなかった。
彼は私の身体から手を離し、その場に立った。
「今日はこのくらいにしておいてやるよ。
感謝しろよな…。
……あと」
彼は少しかがんで座っている私の耳元に顔を寄せる。
「……俺が、奪ってやるよ……。
お前の"初体験"を全部、な……」
彼は色っぽく低い声でそう囁き、笑った。
そして、私から離れると屋上から去っていった。
__バタン
ドアが閉まる音が静寂の中に響く。
私の胸はまだうるさくドクンドクンと脈打っていた。
……どうして?
いつもと違う彼が怖いと思うのに
「……何でこんなにドキドキしてるの……?」
一人呟いた言葉はこの静かな空間へと儚く消えていった。
今日、私は
初めて彼と二人きりになって
初めて彼とご飯を食べて
初めてのキスをして
___初めて大好きな彼の本性を知った。
これから私はどんな初めてを経験するのか
それはきっと
……彼次第だろう。
その後本鈴を聞いた私は、まだ震えている身体で、急いでこの場を去った。