第5章 ドS彼氏の初デート
そして映画が終わりに近づいてきて…
『やっと全てを思いだした…。
…私が好きだったのは…私の恋人は……。
……真琴…くん……』
『あぁ…。俺はお前を信じてた…。お前が思いだしてくれるって…。
好きだ……もう、離さない……』
主人公は記憶を思い出し、本当の恋人の真琴と結ばれる。
……めっちゃ良い話…。
「ね、愁夜くん。これ凄く良い話だ──んんっ!?」
私がそう小声で言い、愁夜くんの方を向いた瞬間、私の唇はあるもので塞がれた。
それは……愁夜くんの唇。
私達は一番後ろの席だから、前の人が振り向かなきゃ見られないけど……。
他の人がいるのに恥ずかしいよぉ……。
「んっ…。
……ちょっと愁夜くん…。今映画良いところじゃん。なんでいきなり……」
「良いところ?…ふーん。お前、やっぱこーゆーの好きなんだな…くくっ……」
「……え?」
目線を再びスクリーンへと戻すと、そこに映し出されていたものは、
『んっ……ま、真琴くん……待って…私……』
『っは……良いだろ?もう誰にも邪魔されないんだから……ん……』
「…………っ!?」
この映画の中で一番甘いんじゃないかと思うほどのラブシーン。
一気に顔が赤くなるのを感じる。
「わ、私が良いところって言ったのはここじゃなくて……」
「くくっ…わかってる…。お前さっきから顔赤くしてばっかだもんな……」
「み、見てたの!?」
私が少し慌てて言うと、愁夜くんは顔を私の耳元へ移動させ、こう囁く。
「あぁ…。こんな映画のキスよりもすごいキスしてるのにさ……。
赤くなって可愛い……んっ」
「んっ……!」
そして耳たぶに小さなキスを落とした。