第3章 ドS彼氏、手当てする
*美琴side*
『おーっと、赤組が白組を抜かしそうです!
凄く力強い走りですね!』
青く澄んでいる空に実況放送が響きわたる。
「がんばれー!」
「ほら、もっと速く走れよー!」
トラックのまわりから聞こえる色々な声援。
今日は全校生徒が熱くなって戦う日__
__そう、体育祭だ。
私は今、自分の組である赤組の応援席にいる。
私達の学校は赤組と白組にわかれて行う。
各学年、クラスが4クラスあるから2クラスずつにわかれる。
私の彼氏の愁夜くんは同じクラスなのでもちろん同じ組なのだが、あの子とは違う組になってしまった。
私の大切な友達、いや__
「みこちゃーんっ!」
大切な親友の七緒(なお)だ。
七緒は頭に縛ってある白いはちまきを揺らしながらこちらに走ってくる。
「七緒?どうかした?」
「え?えっと、別に用って程のことじゃないんだけど、今日はお互いに頑張ろうね♪」
七緒は可愛らしく笑ってそう言った。
七緒は私とは違って、おとなしくてふわふわしていて、いかにも女の子らしいって感じがする。
七緒とは高一の頃から仲が良く、いつも相談にのってもらったりしている。
「うん、頑張ろう!絶対負けないよ!!」
「ふふっ、やる気マンマンだね!
……あ、そういえば……」
七緒は私の顔に自分の顔を寄せて小声で喋る。
「…………最近、朝霧くんとはどう?」
朝霧くん……愁夜くんのこと、か……。
私はこの間あった出来事を七緒に話していた。
あれから少し経つが、彼はいつものように優しく接してくれる。
何かあったら心配してくれるし、味方してくれる。
あの時のような怖い笑みを浮かべないし、あんなことだってしない。
……あの時のことがまるで嘘だったかのように。