第1章 線 香 花 火 *K.N
今日は日曜日。
空調が程よく効いた室内でピコピコ、ゲームをするあなた。
隣にいる私には目もくれず、赤い小人を追いかけてる。
「ねぇ和くん」
呼びかけてみても、お返事はなし。
いつもなら許してしまうけど、今日だけはどうしても呼び止めたくて。
何回も何回もあなたの名前を呼んでみる。
何度目になっただろう。
「ねぇ和『なぁによ、うるさい子だこと』
やっと。返事してくれた。
あなたはやっぱり目は向けてくれないけれど。
その声はとても優しい。
「あの、線香花火しませんか、、」
そう尋ねてみる。
『え、いやよ。暑いもん』
そう言って、ゲームを再開しようとするあなたの手を必死で繋ぎとめる。
だって。
今日が過ぎたら、いつ会えるかわからない。
そんな思いを汲み取ったのか、和くんは
『少しだけよ、』
と言ってゲームの電源を落とした。
そして、ベランダで準備までしてくれる。
『ほら、準備できたから。はやくやるよ』
そう呼びかけられて。
私は早足に駆け寄った。
線香花火を受け取って。
火をつけようとした瞬間、
『先に落としたら罰ゲームね』
そう耳元から聞こえる、甘い声。
私が頬を赤くしている間に、始め。と言って始めてしまった。
しばらく無言で火の玉を見つめる。
すると、、
『ねぇ、好きだよ』
小さいけれどはっきりとした声。
「っ!」
それに明らかに動揺した私は、火の玉を落としてしまった。
左の口角をきゅっとあげて。
あなたは私をくふふって見るの。
『どんな、罰ゲームがいいですかねぇ?』
暑い暑い夏の夜のひととき。