第2章 勧誘
仕事が終わったら、すぐに帰るつもりだったのでおしゃれも何もしていない私服…。
牛島先生の仕事が終わるまではまだ時間があるため1度家に帰り支度を整えてから彼との待ち合わせに向かう。
急患が入りませんように…。
そう心の中で唱えながら、彼を待った。
間もなくして、スーツ姿の牛島先生が現れる。
「お疲れ様、大丈夫ですか?」
「あぁ、今日は瀬見と五色にすべて任せてきた」
という事はよほどのことがない限り呼び出されることは無いだろう。
瀬見先生も五色先生も優秀である。
牛島先生の車で、彼の行きつけのレストランへ。
もしかして、木兎先生の事でも聞かれるのかと思ったがその話題は一切出ることは無く、牛島先生のオペの話や最新医療の話など話題は尽きなかった。
最後のデザートが運ばれてくると、牛島先生からまたも珍しい申し入れ。
「今夜は、俺の部屋に来ないか?もっと話がしたい」
断る理由などない。
病院外で牛島先生と時間を共にできる機会なんて数えるほどしかないのだから。
食事も終わり、少しばかりのドライブを楽しんだ後で牛島先生のマンションへ入る。
2度目?いや3度目?初めてではないものの通い慣れているわけでもない、彼の当直室ならば行きつけなのだが、部屋となるとやはり少し緊張する。
お泊り…していいのかな?
なんてそんな事まで考えてしまう。
リビングに通されて、ゆったりとしたソファーに腰掛け並んでワインを口にする。
牛島先生の部屋はやはり落ち着いた感じがあって綺麗だ。
昼間言った木兎先生の部屋を思い出して、思わずクスっと笑ってしまう。
「どうした?」
「いえ、先生のお部屋は落ち着くと思って」
ワイングラスを置いて、彼の大きな胸に凭れる。
すると、顎に伸びた彼の手が私を掬い優しい口付けが私を包んだ。
何度も重なる唇に、身体に熱が溜まり当直室とは違う緊張が私を包む。
「寝室へ行くか」
そう囁かれ、彼に抱かれて寝室へ向かう。
キングサイズのベッドに身体を沈めて彼に抱き付いた。