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外科医・牛島若利

第4章 前夜


病院を出て、スマホをチェックすると、数名の友人からのメッセージと先輩からの激励が入っていた。
返事を返そうと手元を動かしていると、突然の着信音に驚く。


画面の文字は【牛島若利】
思わず笑みがこぼれて画面をタップする。

「もしもし?」

電話に出れば、牛島の声が耳に響く。
少しだけ会話を交わしていると、目の前に見慣れた姿が現れた。

「乗れ」

路肩に止めた車は紛れもなく牛島の愛車で助手席のドアを開けて羽音を待っているのは牛島若利その人だった。
スマホと本人を驚いた顔で見比べて羽音は彼に言われるがまま車に乗った。

「びっくりしました」
「電話だけで済まそうとも思ったのだが……」
「学会どうでした?」
「なかなか面白いものが見られた」

車を走らせながら、出張先の学会での収穫を牛島は丁寧に聞かせてくれた。
心疾患との同時オペの資料の中に明日の手術に役立ちそうなものもあったと、資料のコピーまで用意してくれていたようだ。
羽音は、資料に目を通しながらも牛島の姿にドキッとしてしまう。

「明日は早いのだろう?」
「一番のオペなので準備とかもありますけど、大丈夫です」

今日の牛島はなんだか機嫌が良い様だ。いつもあまり表情が豊かなわけではないが柔らかい微笑みを見せてくれる。

「牛島先生?」
「なんだ」
「どこに行くんですか?」

どちらかの自宅に向かっているわけではなさそうだし、繁華街も抜けてしまっているため、夕飯というわけでもなさそうだ。

「少し行きたいところがある」

牛島のその言葉に、羽音はひとまず従う事にした。
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