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外科医・牛島若利

第3章 オペナース


数時間における大手術の結果。
もちろん当然の如く天童の命は救われ、救命センターに運ばれていた患者たちもまばらになっていた。

CCUの特別室には、まだ眠りに就いたままの天童がいて、添え付けのソファーに座る牛島の肩に凭れたまま羽音が転寝をしている。
そっと開かれたドアから、白衣に着替えた木兎と赤葦が顔を覗かせた。

「お疲れ様」
「あぁ…」
「おやおや、羽音ちゃんは相当お疲れみたいだね」
「あぁ…」

木兎は、天童のベッドへ寄り聴診器を取り出すと診察を始める。

「強いね~、この心臓。惚れる。赤葦後で写真撮っといてね、あと明日CT見るから…あ~、腹の中も見る?」

ニコニコしながら、彼の診察を終えた木兎は牛島の向かいに座りながら話をする。
木兎の問いかけに、牛島も一つ頷き、赤葦は持っていたクリップボードの中に予定を書き込んだ。

「たまにはいいだろ、こういうのも」
「あまり好ましくはない」
「固いね~」

頭をガシガシっと掻きながら呆れた顔をする木兎。

「どうだった?うちの看板娘のオペ介助は!」

楽しそうな木兎の言葉に怪訝そうな顔を向ける牛島。
いつもならここで天童が口を挟むところだが、当の本人の目はまだ覚めない。

「お前んとこの、山形君だっけ?彼もいい腕してるね。さすがチーム牛島って感じ。初めてだったのにスムーズだった」
「当然だ」
「っで?羽音ちゃんとのオペはどうだったのよ!初めてだろ?」

木兎の興味はそこである。

「落ち着かなかった」

牛島の返事に嬉しそうな顔をした木兎。
眠っている羽音を見て自慢げな顔をする。

「さすが、俺の目に狂いはなかった。最高だな」

羽音の頭に手を伸ばそうとして木兎の手を牛島が払いのける。

「手術の時はお前に貸してやる…だが、こいつは俺のものだ」

今度は牛島が自慢げな顔を木兎に向けた。
挑戦状を受け取ったかのような木兎の顔は、今日一番輝いて見える。

「こいつ、元気になったら飲みに行こうぜ!俺、今日すっげー楽しかった」

そう言い放ち天童の様子をもう一度見て、赤葦と共に部屋を出て行った木兎とすれ違いに五色と瀬見がやってきた。
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