第1章 桜が連れてきた最愛の人
ー僕のお気に入りの場所は、この部屋のソファーだった…。
ー貴方と出会うの僕は、空っぽだ。でも、それに不満だとも思わなかった。なのに、何故だろう胸がきゅんとする。『きゅん』なんて…僕には、似合わない音ですね。
「天蓬元帥??起きて下さい!」
「んにゃ?あれ?朝ですか?」
ふぁぁぁ!と、豪快に欠伸をしながら目を開けると、そこには長い腰までの髪を一つに三つ編みをして、腰に手を当てている美しい女性。
名前を風凛と言う。
そして、天蓬の想い人だ。
彼女は、二ヶ月前に彼の部隊の看護としてやってきた。
『は、初めまして!風凛と申します!精一杯頑張りますので!!宜しくお願いします!!』
一目惚れだった。
『へぇ〜、可愛いじゃないの』
小声で、捲簾がそう言っていたのを思い出す。
「天蓬元帥???」
「あ、すみません。完全に寝てました」
「でしょうね」
お仕事して下さい!と、頬を膨らませる彼女を後ろから抱きしめたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢する。何故なら…。
「風凛」
出入口を、向くとそこには風凛と同い歳ぐらいの爽やかな男性と。
「お姉ちゃん!!」
悟空と、同い歳ぐらいのこれまた可愛らしい少女。
「蓮范!(れんふぁん)凛ッ!」
彼女は、嬉しそうに彼の方を向く。
「天蓬元帥、お邪魔致します」
「いえいえ。寝ていただけですから、全然大丈夫ですよ」
『蓮范』と、呼ばれた彼は風凛の許嫁だ。天蓬の隊の軍人で、とても優秀な男だ。
そして、風凛の腰ほどしかない小さいが顔つきがしっかりしているこの少女は、彼女の妹の『凛』だ。
カッコよくて、仕事が出来る許嫁。
可愛くて姉想いの妹。
幸せ溢れるこの三人の中に、彼が入る隙など一ミリもない。