第2章 *:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽
【若葉のころ 1】
「今日は、お家の方が来て下さってるので、
皆さん、頑張っている所を見てもらいましょうね」
いつもより化粧の濃い先生が、
さっきの授業より、
ワントーン高い声でそう言った
教室中がそわそわして、
いつもと違う雰囲気だ
それぞれが後ろに振り返り、手を振ったりなんかして……
僕は、それを横目で見ながら
気にしてないフリをして、真っ直ぐに黒板を見てた
なのに、
隣の席の田中が、
コソッと僕に耳打ちした
「お前ンち、誰も来てないんだろ?かわいそうだな」
「……別に、関係ないだろ」
僕の両親が亡くなって、
施設に入ってる事はみんな知ってる
だけど今は、
施設を出た事は先生しか知らない
わざわざみんなに話す事じゃないし
僕の家族になってくれたしょーちゃんは、
大学生で忙しいんだって、ちゃんとわかってる
"学校の事、何でも言うんだよ"
……しょーちゃんは、そう言ってくれるけど
授業参観なんかで、
忙しいしょーちゃんを困らせたくなんかない
僕が無視したから、
田中はつまらなそうな顔をして、
また別のヤツにチョッカイ出してた
内心ホッとした時だった
ガラガラと背後で音が響き……勢い良くドアが開く
廊下の空気がサァーッと流れ込むのを感じた
思わず振り返ると
そこには、
見慣れないスーツ姿のしょーちゃんが、
はぁはぁいいながら、教室に飛び込んで来たとこだった
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