第5章 心をみつめて
第三者目線
なおはしばらく秀吉の腕の中で泣いていた。
泣いた後の顔がまた愛おしくて、秀吉はそっと頭を撫で
「また、遊びに来い。今度はお茶でももてなそう」
そうなおに告げた。
『戦前で仕事が溜まってるからな…』
秀吉は少し残念な思いを心に止める。
「はい」
なおは小さく呟くと、秋野と共に外へと足を向けた。
「あっ」
と小さく声をあげて、なおが振り向く。
「どうした?」
「あの、嫌なら…いいんです」
「何だ?言ってみろ」
「あ、あの。秀吉さんのこと【秀兄】って呼んでも…いいですか?」
秀吉は思わず息をのむ。
小首を傾げ、微かな微笑みに少し赤らめた頬。
「…秀吉さん。ごめんなさい。やっぱり忘れ…」
なおは嫌だったのかと思い、しゃべりだす。
それに被せるように、秀吉は返事をした。
「いいぞ。お前の兄になると約束したからな」
その返事になおは微笑みを深め
「じゃあ…秀兄。またね」
なおは小さく手を振って、また外へと向かって歩いていった。
その後ろ姿を見送ると
「兄になるなんて言わなきゃ良かったかな」
そう小さく呟くも、お屋形様の顔が浮かび、
頭を盛大に振る秀吉。
「秀吉様どうなさったのですか?」
ふと気がつくと、三成が見つめている。
「何でもない…」
そんな自分を見られた事に、少し恥ずかしさを感じぶっきらぼうにそう告げると、部屋へと入っていった。
「……?頭に何か付いてましたかね?」
と斜め上の解釈をする三成の声を背中に聞きながら…。