第2章 マトリちゃんと雨と傘
夏目「良いんじゃない?怜ちゃんらしくてさ」
泉「…え?」
夏目「悪いことした訳じゃないんだから、そんな顔しないでよ」
由井「むしろ俺は他人の為にここまで出来る泉を尊敬している」
青山「お前はもう少し他人に興味を持て」
今大路「怜さんの積極性は少し危ない時もありますが、それが怜さんのいい所でもありますよね」
関「本当に…いい部下を持って良かった」
関さんがふわりとした笑みを浮かべる。
泉「皆さん…有難うございます…」
思ってもいなかった展開に心が締め付けられる。夏目くんもこれからも頑張って、とヘラっと笑った。私は自分のことを改めて分かってもらえた気がした。
思わず溢れそうになった涙を隠すように、そうだ!と声をあげてバックの中から貰った和菓子を取り出した。
泉「あの、これ…道で会ったお婆さんから貰ったんです、人数分あるので良かったらどうぞ」
由井「道で見知らぬ人から和菓子を貰ったのか?」
青山「また何かしたんだろ?」
青山さんがニヤリと笑った。
泉「そこは秘密ってことで!」
今大路「親切心が溢れてますね」
夏目「溢れすぎてそろそろヒーロー化しちゃいますよ」
青山「雨の中ずぶ濡れのヒーローなんているか?」
泉「ヒーローは雨でも関係ないんですよ」
私は皆に和菓子を配って、自分の席に着いた。そして女の子から貰った折り鶴をデスクに飾った。
あの女の子の笑顔を思い出して、心が軽くなったような気がした。