第14章 荒木田さんと小説※裏注意
本のページをめくる音、壁掛け時計の秒針、しとしとと窓の外で雨が降る。静かでどこか心地いいこの空間に私たちはいた。
久々のデート、まだ数える程しか行ったことがないのだが、蒼生さんが遊園地に行こうと言ってくれた時は何だか思わず泣きそうになった。
しかしその願いは叶わず、生憎の雨により中止になってしまった。私以上に落ち込む蒼生さんが何だか可愛いかった。
怜「そういえば前に蒼生さんが私に貸したい本があるって言ってませんでした?それを借りてもいいですか?」
蒼生「…ああ、それならうちで読んでくか?」
この一言で今の状況に至る。本は好きではあるが自分から買って読むほどでもない。だが今読んでいる恋愛小説はとても切なくて甘いストーリーとなっていて、私はのめり込むようにして読み進め、すぐに読み終わってしまった。
怜「あ〜、すごい良かったです!!」
蒼生「そうか、都築先生の本は全部最高だからな」
怜「他にオススメとかありますか?恋愛ものでまた違ったものとか…」
蒼生「そうだな……あ、これとかいいと思う」
すっと差し出された本を受け取り、私と蒼生さんはまた本を読み始める。
暫くして、私はページをめくるごとに複雑な気持ちになっていった。
怜(ひょ、表現が生々しい……)
蒼生さんから渡された本は都築先生の本ではあるが、予想していたミステリー小説などではなく、かなり色気が溢れ出るような官能小説だった。
怜(蒼生さんはこれをどんな気持ちで読んだのかな…男の人だからやっぱりそういうのはあるよね、うん、全然おかしいことじゃない、落ち着くのよ私…)
蒼生さんが勧めてくれた本なのだからと思い、私はその本を読み進めることにした。