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マトリちゃんの恋愛事情*

第2章 マトリちゃんと雨と傘


泉(何で今日は…こんな事ばかり)

目の前には店の屋根で雨宿りをする女の子。小さく泣いているのが分かった。こんな様子を見ても素通りする人がほとんどであるが、自分はそのほとんどの人にはなりたくない。

泉「ねぇ、どうしたの?」

私は出来るだけ優しく声をかける。その女の子は私の方を向いて初めは戸惑っていたが、安心したのか涙を零しながら話した。

女の子「あのね、私の傘ね、取られちゃったの。ママが買ってくれたお気に入りの傘だったのに…」

どうやら不運にも店で買い物中に傘を間違えて取られてしまったらしい。そしてなんと1人で買い物に来たらしい、まあまだ昼間なので大丈夫だと思うのだが。

私は女の子の親を呼ぼうとしたが迷惑をかけたくないと女の子が嫌がった。なんと頼もしい子だ。

この子の家まで送っていくとなると時間が少しかかりすぎてしまう。私は女の子の頭を撫でながら自分の傘を渡した。

泉「じゃあお姉ちゃんの傘、気に入って貰えるか分からないけど貰ってくれる?ここにハートついてるし、ほら」

女の子「わぁ!可愛い!!いいの?」

泉「うん、いいよ」

女の子の笑顔が雨の中無邪気に輝いた。

女の子「でもお姉ちゃん濡れちゃうよ」

泉「お姉ちゃんはここから近いから大丈夫だよ、じゃあまたね」

出来るだけ早く帰らないと…と少し焦っていた私は、女の子の心配を振り切って走った。ヒールでコケないようにと祈りながら。

自分のバックから手帳が落ちたことにも気づかずに…。
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