第5章 関さんと付箋
休憩も一息ついて、また仕事に取り掛かる。そんなのんびりと休んでなんか居られない程、マトリという仕事はハードなのである。
新人の私でさえこんな大変なのに、課長である関さんは一体どれくらいの量の仕事をこなしているのだろうか…。愚痴の1つくらい零してもいいはずなのに、関さんは全く文句も言わずひたすらに仕事に向き合っている。
泉(私から言うのはおこがましいかもしれないけど、何か関さんに頑張りすぎないように言いたいな)
きっとかなり頑張っている関さん、そして辛くても弱音をほとんど吐かない。付き合うようになってから、私に対しても疲れた、と言ってくることは稀である。
そんな関さんだからこそ、疲れやストレスをためてしまってるのではないか、と部下としても恋人としても心配になるのだ。
でも、公にはできない恋人の関係なので、ここで下手に関さんに言ったら無駄に勘のいい2人に疑われる可能性もある。
泉(あ、そうだ!これを…)
私はふと手元にあった付箋を1枚とり、近くにあったペンであることを書いた。そしてちょうど関さんに渡す資料にペタリとくっつけ、関さんの元へ向かう。
泉「関さん、前言ってた資料できました」
関「ああ、ありがとう」
その爽やかな笑顔につい頬が緩んでしまう。そして関さんが付箋のメモに目を通す前に私は席に戻った。
私は自分の席から関さんの反応を見ようと先ほど入れた珈琲を飲みながら盗み見た。ちらりとその資料の隅を見た関さんの眉が動いた。
そして関さんはクスリと笑い、その資料を脇に置いた。
泉(少しは関さんの役に立てたかな…?)
関さんが笑ってくれたので私は満足し、また自分の仕事に取り掛かった。