第22章 ep22 絡糸
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《及川side》
岩ちゃんと今日の試合の映像を見ていたけれど、トイレが近くなって一度談話室を後にした。
セミナーハウスの宿泊部屋の前を通ろうとすると、一つの部屋から異様に話し声が聞こえる。
近づいてみると、なるほど、少し扉が開いている。
他のチームにも迷惑がかかると思い、そっと閉めようとしたけれど、次に聞こえてきた聞き慣れた声に、はっと手を止めた。
「どうって・・・何が?」
りこ・・・?
どうしてこの部屋にりこが?
いや、そんな事は後ででいい。
話の内容を探るために息を潜めて会話を盗み聞きする事にした。
「付き合ってるんですよね?及川さんと。何か暗黙の了解みたいな感じで誰も触れないですけど」
あぁ、なるほど。
下級生たちが、自分と彼女の関係を知りたがっているのか。
まぁ、人前ではあまりイチャついてないけれど、恋人同士が放つそれと無い雰囲気が、他のチームメイトも察していたのかな。
「結論から言うと、付き合っては、いる・・・」
観念したように話すりこ。他のチームメイトは騒ぎ出す。うるさ。
付き合っては、ってなに。は、って・・・
まぁ、今更隠したって何も後ろめたい事も、チームの迷惑になるような事もしていないし、この際りこにヤラシイ目をして近づく輩がいなくなればいいとも思うね。
「でも、こうしてバレー三昧だし、特に恋人らしいことは何もしてないよ」
「手、繋いだりとかっすか?」
金田一の質問に、パシッとどこかを叩く音がした。
「小学生じゃねーんだから流石にそれはあるだろ。ましてや及川さんだし」
ん?今の声・・・矢巾かな?明日トス練1000本な。
「最寄り駅、一緒なんですよね?練習終わって帰った後とか、何もないんですか?」
「うーん・・・」
流石みんな健全な男子高校生。
女の子同様、こういう話が大好物な訳ね。
でも残念、掘り返しても浮いた話はまだ無いよ〜だ。
「一緒に帰って、送ってもらうだけかな。向こうも練習で疲れてるしね」
りこはこういう時でも俺を気遣ってくれてるんだな・・・