第20章 ep20 我慢
勿論、学校では及川にも・・・。
分かってるけどそれが少し寂しくて、気持ちを疑いそうになってしまう事が最初頃はあったけれど、
こうして2人きりになった時にだけ見せる女の子らしい姿。
この姿を見ると、そんな邪念は吹き飛ぶ。
あぁ、本当は、うんと甘えたいんだなと感じる。
だけど、チームのことを一番に考えている彼女だから、それを沢山我慢している。
だから、2人の時は沢山甘えさせてやりたい・・・
(って言うのも勿論あるんだけど・・・・・・・っ・・)
本当はそろそろ先に進みたい。
抱きたい
抱きたい。
抱きたい、りこを!
及川はそんな身勝手な衝動を必死に抑え込むようにりこをなるべく見ないようにして、まんまるい月を見上げる。
(今日は満月なんだ・・・・・・)
狼にならないように、りこを衝動的にどうにかしてしまわないようにしないと・・・
きちんと、送り届けてあげないと・・・
「徹、くん・・・?」
そんなことばかり考えていると、りこが不思議そうに自分を見上げていることに気づいた。
「どうしたの・・・?」
「あ、ううん、何でもないよ」
その瞳が不安そうに揺れているので、及川はりこに向き直り、そっと頬に触れた。
(あぁ、綺麗だな・・・)
綺麗で、可愛い、本当に可愛い俺の彼女・・・・・・
及川は触れるだけのキスをして、りこの頭を撫でた。
「りこ〜」
甘えるように、りこをぎゅっと抱きしめる及川の姿を知っているのは、月と、りこしかいない。