第14章 ep14 孵化
ーーー・・・
「かっぁぁぁ!及川に負けると本当心の底から腹立つ!」
「へっへーん、うちの吉川くんのミラクルスパイクは最強だからね!たまに肘で打つけど」
及川のクラスは順調に勝ち進み、見事バレー部門では優勝を飾った。
両手で頭を掻き毟る岩泉に向けて誇らしく胸をはる及川。その隣には及川のクラスでレフトを務めた吉川が立っている。
「及川やっぱうめーな!素人でもわかるわ!」
「吉川くんもサッカーやってるから足技とかめちゃくちゃ上手だったよ、ナイスナイス」
パシッとハイタッチを交わして祝福し合っていると、隣の女子の試合の方が盛り上がっていることに気づいた。
「ん・・・?」
及川は隣のコートの方に近づいていくと、どうやら対戦しているのは岩泉のクラスだった。
(てことは・・・)
おおーっと歓声があがる。
「すっげー、また決めた」
「やっぱ女バレは上手いな」
「いや、あの子バレー部じゃねーべ、一般生じゃん」
妙に人が集まっているのは、決勝戦だからというだけでは無い。
ギャラリーたちの間から顔を出すと、岩泉のクラスの方には、りこの姿があった。
「あれ?りこ、出るの後衛って言ってなかった?」
「さっきうちのレフトが突き指して、人数足りなくて出てんだってよ」
いつの間にか隣で見ていた岩泉が答える。
「へぇ、そうなんだ・・・」
という事は、久々にりこのプレー姿が見られるという事だ・・・
(楽しみだな・・・)
試合はいくらりこや、バレー部がいても他の生徒が弾くボールからミスが生まれ、点差はほぼなかった。
そんな中で、りこはレシーブで拾って、開いてトスを呼んで打つ。そのフォームはお手本のように美しく、軽く打っているがミートも綺麗にかかっている。
代役を頼まれて仕方なく入った様であるが、しっかりとチームに貢献していて他の生徒達は嬉嬉としている。
「すっごいよりこちゃん!」
「上手なんだね、昔やってたりしたの?」
「あ、うん・・・みんなもナイスっ」
普段大人しい態度でいるりこは困ったように笑みを浮かべる。