第4章 ep4 記憶
気づけばいつも彼女を目で追っていた。
彼女に名前を呼ばれるだけで胸が舞い上がった。
隣のコートから、休憩中の彼女が見ているのがわかると、調子に乗って普段よりダイナミックにボールを追いかけたりした。
さっき話した時も、彼女は何一つ変わらない笑みで、自分を見てくれていた。
バレーで繋がった2人。
しかし、りこは
"もう、バレーはやらないの・・・"
及川の知らない間に、りこに何があったのか。
何が彼女をあんな表情にさせてしまったのか・・・
もう一度あの頃の様に笑ってほしい。
及川の思いは胸の内で静かな炎となって燃えていた。
ふと、及川は顔を上げて通学用の鞄の中から何かを取り出した。
そして部屋を出ていきリビングへと歩いていく。
「母さん、明日、猛来るよね?」
「うん、多分・・・どうして?」
「これ、猛にあげといて」
そう言って母に渡したのは、今日学校で女子生徒から貰ったお菓子だったーーー・・・