第3章 *歪んだ愛とその先に*
〜ユイside〜
「ん…っ!…」
頭に鈍い痛みが走る。
なんとか起き上がってあたりを見渡すと、そこは私の部屋でもなければ、ルイの部屋でもない。
「私……どうしてこんな所に…?」
だってさっきまでリアム王子と話して…それから……
それから…?
違う。ルイのところに戻ろうとした時、誰かに頭を殴られたんだ…
必死に思考を巡らせるけど、あの時私と一緒にいたのは1人しかいなかった。
(まさか…だって…あんなに優しくて…)
そんな事する筈ない…
そう思っていた私の思いは次の瞬間打ち砕かれた。
ガチャ……
扉を開け、入って来たのは、私の話を熱心に聞いてくれた、その人だった。
「リア…ム…王子…」
あまりの衝撃で言葉が出ない。
そうしている間にリアム王子は私に歩み寄り、手の甲にキスをした。
「…っ…!」
体が震え、今すぐにでも逃げ出したいのに手と足は手錠で繋がれて身動きが出来ない。
「そんなに怖がらないで下さいプリンセス。私はあなたを殺したりはしませんよ。それとも…何か他の事に怯えているのですか…?」
その冷酷な笑みは、私を絶望の淵に落とすのには十分だった。
「貴方も……プリンセス制度に反対なんですか…?」
震える声をなんとか絞り出し尋ねると、シリル王子は「とんでもない!」と言った。
「私は…プリンセス制度には賛成ですよ…こうして貴方に出会えたのですから!これ以上に幸福なことはありません…!」
どんどん背筋が凍っていくのがわかる。
「私はね……貴方を…心から愛しているのですよ…」
そう言い放つと、リアム王子は腰に付いていた短剣を引き抜き、その剣で私のドレスを引き裂いた。
「…っ…!っあ…」
ドレスと一緒に私の肌も浅く切られ、冷たい肌から赤い血がぽとりと零れ落ちた。