第4章 *目覚めの時と暗闇*
「一度した返事を取り消したい、ということですか?」
「ええ、そうです。もともと入っていた公務に日程が変更になって時間ができた、とおっしゃっていました」
「何かそこまでして大公と直接お話ししたいことがあったのでしょうか…」
基本的に一度した返事は取り消さない。それは言わなくてもわかるいわば常識的マナーだ。しかもこんなに直前になって言う事はさらにあり得ない。
「ええ、私も重要なお話があるのかと思いまして少し不思議には思ったのですが参加を了承したのです」
そうなると俺の中にはもう一つ疑問が残った。
「ですが今日。大公がリアム王子らしき人物とお話しているところはあまり見ていませんが……」
「ご到着の際に私からご挨拶をしたのですが、あちらからは急な申し出で申し訳ないというお話だけされて……」
「その後は何もお話されなかったのですか?」
俺が尋ねるとデュレー大公は少し困ったように言った。
「それが…招待客の方の一通りご挨拶を終えた後に私から話しかけようと思ったのですがもうお帰りになっていたのです。どうやら急に体調が悪くなってしまったらしく」
「え…?」
招待された客が主催者に何も言わず帰ることなんてあるのか。無理を言ってまで参加したパーティーだ。
思考をぐるぐると巡らせていると、デュレー大公は言った。
「私も流石におかしいと思い…私ではなく、招待客の誰かに用があったのではないかと考えていたのです」
そこまで言ったところで俺はハッとした。
「それがユイということですか…?」
「かもしれない、というだけで証拠はないのですが…リアム王子は最近とある有力貴族の令嬢から婚姻の申し込みを受けていたそうなんですがそれを断っていたという噂も耳にしたことがあります」