第23章 水色の思い出 (逆ハー)
この状況は絶対そのせいだ。どうせ着ないのにと思いながらも水着を買ってしまった為に、こんな軽い拷問みたいな状況になっているのだ。
右にはトリッシュ。左にはレディ。正面にダンテ。奧にバージル。
は、1対4で彼ら全員に、海に行こうと言い寄られているのだった。
「いいじゃないもう観念しちゃえば。行きましょうよ海」
にっこりと、女性ですら見惚れるような天使の笑顔を浮かべるトリッシュ。
「せっかく水着も買ったんだし、着なきゃ損よ。水着が可哀想よ。報われないわよ」
水着を買わせたのは誰ですか、と思わず問いたくなるような台詞をしらっと言うレディ。
は口ごもる。
「でも、あんな露出度高い水着…しかもビキニなんて着た事ないし、私は二人みたいにスタイル良くないし…」
「俺はビキニいいと思うぜ。肌は若いうちに出しとけって誰かさんも言ってたしな」
「ダンテが言うと変態くさいわね」
「ほんと。…でも、レディの言う通り勿体無いわよ。だってぴちぴちに若いんだし、いい身体してるんだから」
いや、それはない。は口に出さず言った。
スタイルの良さならレディとトリッシュの方が抜群にいいからだ。
トリッシュは大人の色気が漂うような、出る所は出てひっこむ所はひっこんでいる理想的な体型である。モデルも尻尾を巻いて逃げるだろう。
彼女自身口は多少悪いが、さらさらの金髪に透き通るような肌は女神かと思われても不思議はない。
巨大な悪魔の力のおかげで高い実力もあり、実際にそう思われてしまった時もある。今もトラブルは絶えないのだ。
レディもレディで、一般女性よりも筋肉がついているもののすらりと引き締まり均整の取れた肢体をしている。
傷だらけの身体といえど、ショートカットに愛嬌のある顔は、トリッシュとはまた違う魅力があるのだ。
私服ですら気後れするというのに、この二人と水着で並ぶなんてとんでもなかった。