第17章 いちのいのち (医者パロ)
バージルはの背中に手を回し支え、顔をしかめていた。
分かっていたはずだ。今日のの体調は悪いと。
無理矢理部屋に引き摺り戻せば良かったはずだ。屋上で彼女を見つけた瞬間に。
───馬鹿か俺は…
つまらない我が儘で。外を見るの、諦めたような悟ったような瞳に目をとられたせいで。
点滴を手に持ち、を横抱きに抱える。
痛みは程なく治まったようで表情は少し和らいでいるが、部屋に戻して検査をしなくてはならない。
華奢で軽い身体はバージルの腕に治まり、も抵抗せずそれに従う。
「大丈夫か」
返事はない。うつむいた表情は伺えず、手は少しだけ震えていた。
その手が、言葉にならない返事を返すようにバージルの白衣を掴んだ。
楽になったは思い出したように深く息をつき、そこでようやく自分の状況に気付く。
バージルに、姫抱っこ。まさかと思ったが夢ではない。いやむしろ夢であって欲しい。
一気に体温が上がり、嬉しいとか幸せとかよりも何かとんでもない事をしてしまったような気分になる。
気付かれないようひたすらにうつむいた。
シャツと白衣ごしに触れ合う体温。平均体温低そうだなと思っていたが確かに暖かくて、それが意外だった。
好きだなあ、と思う。
格好いいな、と思う。
しかし彼はあまりに遠い存在だ。退院すればそれで別れが来る。
叶わないのは重々承知。見つめる以外に望む事はない。
だけど。
「……やっぱり好き」
ぽつりと、バージルの靴音に紛れさせてわからないように小さく呟く。
すると。
「言うのが遅い」
驚いた事に答えが帰ってきて、は思わず彼を見上げた。
見下ろす彼の視線とぶつかる。
この胸の痛みの正体は
2008/07/17