第15章 白銀
案の定は嬉しそうに笑み、先を行くバージルの後を追った。
そして外に出ると、身を切る空気とともに。
「うわ…雪?」
はらりはらりと音もなく、純白の粒。
「どうりで寒いはずだな」
空を見上げてバージルは言う。呟いたような、言い聞かせたような。
傘を取り顔を上げたは、視界に入ったその姿に思わず見惚れた。
真っ白な空気の中で銀色の髪は雪に溶け、真っ黒なコートを飾るように雪がはらはら落ちていく。
白い息を吐く薄い唇。肌にも手にも雪が落ち一瞬で溶け、バージルはそれを手の平で感じぼんやりと眺め。
いつか。いつか、今にもこの瞬間にも、雪に包まれ白く消えてしまいそうだ。
それはあまりに澄んでいて、あまりに透明な風景。
一枚の絵画のような光景。
「どうした?」
バージルがこちらを見た。アイスブルーの瞳まで澄んで見える。
何でもない、と呟き、は傘を開かず手に持ってバージルの隣に並んだ。
傘はまださしたくなかった。
彼の手が突っ込まれているコートのポケット。その中に自分も突っ込んでみる。
中にはバージルの手があって、触れると握り返してきてくれて。
バージルは雪が似合うねと言うと、不思議そうな表情が返ってきた。
2007/01/20