第48章 狂愛 (ヤンデレ風味)
少女は暗い部屋にいた。
暗い部屋の中、ベッドに腰かけて目を閉じていた。
この現実から目を逸らすように。
耳を澄ませるように。
光を拒絶するように。
目を閉じて、動きもせず、ベッドに腰かけていた。
きぃ、とドアの軋む音が響く。瞼を通じて感じる僅かな光に、少女は目を開けた。
「また電気付けてねぇのかよ。付けろって言ってんだろ」
赤い人が現れる。
ダンテはドアの横にあるスイッチを手探りで探すと、パチリと押した。
光が瞬いて、全てを照らし晒し曝し出す。
明るさの中に少女を見つけ、ダンテはほっとする。ゆっくり少女に近づいた。
少女の目には切なさが込められ、こちらをじっと見つめてきている。
それを受けながら彼女の前に立つと微笑んで、頬にそっと触れた。
「大丈夫だったか?」
何が大丈夫だというのだろう。
こんなに広い部屋でただ一人置き去りにされて。
ダンテは仕事で一日の大半は家にいないというのに。
「何か変な事なかったか?」
変な事などどうして起こりうるのだろう。
たった一人閉じ込められて。外はおろか部屋を出る事さえ禁じられているというのに。
黙り込む少女に、ダンテは少し苦笑して肩をすくめて。
少女と視線を合わせるようにしゃがみ込む。
小さな手を自分の手で包み込み、戸惑ったような目を向ける彼女に安心させるように笑ってやった。
「今日はもう仕事ねぇからな、ずっと家にいるぜ。何か欲しいものあるか?」
すると少女は、せつなげに哀しげに唇を開いて、迷いもなく。
「ここから出して」
瞬間、ダンテの表情は変わる。
笑顔は支配者のそれに変わり、刺すような視線で少女を絡め見て。
ぎり、と彼女の手を握る。
少女に唇を寄せて囁いた。
「駄目だ。外に出たら人の目に触れちまう」
陽に当たっていないせいで真っ白になった少女の首筋に、誓うように口付ける。
この肌も、声も、視線も、何もかも何もかもを自分は手に入れた。
手放すなんて冗談じゃない。
「俺だけ見てろ」
幸せだろう?
お前は俺を好きだと言った。俺もお前を好きだと言った。
なら、これは理想の形だろう?
2008/1/1