第9章 決意
階段を上りながらの後ろ姿を見る。
彼女はまだソファに座ったままで、舐められた耳を押さえていた。
ここからでもわかる。耳が紅い。
うつむいた彼女の首を短くなった髪がさらさらとすべり、ヒュウイはそれに足を止めた。
のぞくうなじ。
魅入る。
「……ふん…」
笑って、再び歩き出した。
がまた、俺だけを見る。
俺だけに話し
俺だけに笑い
俺の言う事を聞き
俺に恐怖する。
何て甘美な夢。
その気持ちは狂気じみているようにも思えたが、ヒュウイは構わなかった。
ただ、期待に心が踊った。
あいつは今頃どうしているだろうな?
プライドだけは一級品の奴だ。まだ意地を張っているのだろう。
俺も本気出すぜ。は俺のものだ。
逃げた時点でお前は白旗を上げたようなもの。
勝負にならねえな。
「あいつは、俺が…」
ヒュウイの髪を、どこからか吹いた風が揺らした。