第9章 決意
きっとは、自分がどこかに出掛けたのだとおもっているのだろう。
それでいい。そして俺は、二度と帰らない。
それよりもこれからどこに行けばいいか。
歩きながら、バージルは考えた。
しかし、長くあの家にいたせいで、あてのない旅に気持ちは戸惑うばかり。帰る場所がないというのは、こんなにも心許ないものなのか。
昔。
あの家に住み着く前。
俺はどうしていた?
考える。
それだけを考えて歩く。
――――――――――
ヒュウイは、2階の窓から人影を見つめていた。
青い人影。
足取りはしっかりしているようだが。
「………」
まあ、あいつの頭の固さならこうなる事は予想できる。
朝俺が飯を作っている間に何が起こったかなんて、の様子を見れば大体見当はついた。
あいつはを傷つけるのを恐れて出ていったのだろう。
「大馬鹿野郎だな」
ヒュウイは笑った。
後に残された者の事を考えているようで考えていない行動。
勝手に気持ちを決めつけて、を守るようでいて嫌なものから逃げているだけ。
まだまだガキだ。
窓から離れる。
がバージルが出ていった事に気付くのも時間の問題。
それでが傷つく事、考えなかったのかよ?
しかしそれも、今やを任されたヒュウイが何とかすればいい問題。時間はたっぷりある。
さて、話すか気付かせるか。
とりあえずヒュウイは階下へ降りる事にした。
階段を降りて目に入るのは、雑誌を読むの姿。
ヒュウイを認めると顔を上げた。
「…あいつは?」
試しに聞いてみる。
「さっき出て行きましたけど」
出掛けた、と信じている答え。
ほらな。
ヒュウイは笑んだ。