第7章 哀傷…
僕は尚も不安そうに瞳の奥を揺らす智子を安心させようと、白く小さな手をきゅっと握り、ゆっくりと顔を寄せると、その愛らしい唇に自分のそれを重ねた。
そして僅かに空いた隙間から智子の咥内に舌を忍び込ませると、緊張のせいか、少し強ばった智子の舌を絡め取った。
初めて感じた智子の味は、僕が思い描いていたよりも、ずっと甘くて暖かな物で…
僕は一瞬でその味の虜になった。
無我夢中で咥内を犯し、唾液の一滴までも吸い取るように貪った。
「ん…んん…っ…」
智子が苦しげな声を上げるまで、ずっと…
「ごめん…つい…」
唇を離した途端、僕の中に芽生え始める罪悪感。
それは禁忌を犯すことへの罪の意識ではなく、ただ智子に呼吸をする間も与えなかったことへの申し訳なさだ。
でもそんな僕に智子は、
「智子、こんなキッスは初めてよ。ねぇ、兄さま? キッスってとても苦しい物なのね」
ふわりと笑って見せた。
その無邪気な笑顔に、僕の胸がどくんと一つ大きく鼓動して…
僕は精一杯の笑顔を浮かべて、
「そうだね、僕も知らなかったよ…」
そう言うと、智子の首筋に顔を埋めた。
そう…、知らなかったよ…
智子がこんなにも、甘い芳香を放っているなんて…
知らなかった。
僕は智子の放つ甘い香りを楽しみながら、智子の薄い寝衣の釦に手をかけた。