第24章 本日の近侍※御手杵 R18
「主、ごめん。俺、最低だな……」
謝っても、許されることじゃない。
彼女は黙ったまま俯くが、桜の頬に残る涙の痕は御手杵を無言で責め立てているようだった。
「主にひどいことしたよな……俺のこと、刀解してくれてかまわない」
もう、これまでのように一緒に居られるとは思ってない。
けど、御手杵にはこれだけは言っておきたいことがあった。
「俺さ、主のこと好き、なんだ。だから止まらなくて……」
言い訳にしか聞こえなくても、この想いだけでも知ってくれればいい。
「……別に、いいんです」
静まりかえった室内に彼女の声が響く。
「えぇ……?」
別にって。
初めては大事なもの、のはず。
御手杵は驚いた顔で桜の顔を見ようとする。
「いいんです。そりゃ、最初は怖かったですけど……」
俯いた顔をあげ、桜の瞳が御手杵を捕えると、彼女の頬が赤く染まる
「初めては、好きな相手とって思ってましたから」
初めては、好きな相手と。
つまり、それはつまり。
「え……うえーっ!?」
最初、その言葉が理解出来なかったが、何度も頭の中でその言葉を繰り返すと、嬉しさが一気に込み上げる。
お互いに想い合ってるって、ことだよな。
御手杵は確認するように、桜の顔をじっとみつめた。
「俺?俺が主の一番でいいのか?」
本当に嬉しくて、桜の手をギュッと握り締める。
彼女は耳もとま真っ赤に染めていて、そんな桜も愛おしいと感じる。
「なあ、もう一回言って……」
耳もとで囁くと、桜は身体を縮こませた。
そんな仕草も全部可愛い。
「だから……」
「何?聞こえない」
恥ずかしがる桜、御手杵はニヤニヤしながらを急かす。
早く、彼女の気持ちを聞かせてほしい。
「好きです……御手杵のことが、ずっと前から」
ずっと、この言葉を望んでいた。
自分から言うことも出来なかったし、彼女が想ってくれてることもわからなかったから。
「俺も主の……いや、桜のことすっごく好きだ」
もっと早く言えばよかった。
桜と御手杵の関係はもう、ただの『審神者と刀剣男士』じゃない。
この日から、彼女と彼は『恋人同士』となった。
終