第18章 誕生日ケーキ※鶴丸国永R18
お互いに欲望のまま体を貪り合い、気付けば丑三つ時。
「あ……もうこんな時間、結局パンケーキは一枚しか焼けなかったし」
台の上は色々ととぐちゃぐちゃだし、生クリームは全部使ってしまった。
この惨状は、燭台切に怒られるレベルだわ。
「なあ、桜……」
トントンと肩を鶴丸に叩かれる。
もう、今それどころじゃないのですけど。
「鶴丸も片付けてよ、このままじゃ燭台切に……」
嫌々振り返ると、目の前の光景に固まった。
「え……なに、え?」
たった一枚のパンケーキに、火を灯した蝋燭が突き刺さっている。
鶴丸はお皿を手に、にっこりと微笑んでいた。
「桜、今日が誕生日なんだろ?誕生日、おめでとう」
「……あれ、私……誕生日のこと」
誰かに話したかな。
誰にも言っていなかった気がしたけど。
「カレンダーに、誕生日とでかでかと書いてあったけどな」
あぁ、そういうこと!
そういえば、自室に飾ってるカレンダーに書いてたわ。
「ほら、願い事をしてから火を消すんだろ?」
え、願い事?
願いごと、願いごと……。
なんだろう。
早く消さないと、溶けた蝋がパンケーキに滴ってしまう。
慌てて頭の中で願いごとを思い浮かべた。
「ふーっ!」
一気に息を吹き、蝋燭を消す。
大人になっても、ケーキの蝋燭を消すのはワクワクした気分にさせてくれる。
「鶴丸、ありがとう」
鶴丸が誕生日を祝ってくれたこと、すごく嬉しい。
彼に微笑むと、鶴丸は私の顎に手を添えて掬いあげた。
「……で、なにを願ったんだい?」
「な、内緒っ」
「ふーん、俺に出来ることなら、何だって叶えてやるぜ。俺は君の刀剣男士、君とこの先ずっと共に在るのだから」
その言葉が本当なら、もう願いは叶っているようなものだ。
私の願いは、この先も彼と一緒に過ごしたい、なのだから。
「ほら、さっさと寝ようぜ。朝になったら、みんなが祝いにくるぜ。ま、一番最初に祝ったのは俺ってこと、忘れるなよ?」
きっと、次の誕生日もこうやって彼が祝ってくれるのだろう。
次の一年も、良いことがたくさん起こるような気がした。
終