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君想ふ

第5章 土御門の落ちこぼれ


「お前なぁ…」
呆れたようにため息混じりに言う晴明を一瞥し窓の方へ視線を移す。
何故治癒術の効き目が悪いのか、そして九威那自身の治癒力の低さの原因は何なのか、優先的に原因を知る必要があるのはその2点だろう。
「そういやさ、香純が今日の放課後にお前のとこで術の勉強会するって言ってたけどマジ?」
「…え?」
何だそれは聞いてないぞ。
「俺も行くからヨロシクな!」
「え、ちょっと!?」
サラリとそういって晴明は自席へと戻っていき、丁度HRの開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
(………え、マジっすか)
波乱の放課後になる予感しかしなかった。


そして来てしまった放課後。
(なんでよりにもよってこんな時に…!!)
今、自宅には療養中の九威那がいるのだ。もし彼が族長だと2人にバレてしまったら倉橋家と芦屋家から彼を守れる自信はない。そして考えあぐねた結果、千音はひとつの結論を出した。
晴明と香純に「散らかってるから片づけさせて」と一言言って先に帰宅し、九威那を探す。
「九威那!どこ!?」
すると、寝室の方から小狐姿の九威那が姿を現した。
「なんだ騒々しい」
「九威那…この後、同じ陰陽師の家系の子が来るから私の言う通りにしてほしいの」
「お、おう?」
「私が傷ついた妖を治療してるっていうのは知ってるんだけど、その相手が族長ともなるとあの子達も貴方を"上"に突き出すかもしれない。だから、族長だと悟られないように妖力はできるだけ抑えて。出来る?」
一息に説明し終えた千音の表情はなんとも不安そうな色をしていた。
「フン。誰にモノを言っていると思っている?それくらい朝飯前に決まっておろう」
「…うん、流石だね。頼んだわよ九威那」
まだ貴方を連れていかれるわけにはいかない。族長がやられたとあっては決して埋まらぬ溝が出来てしまう。
「あなたの事、絶対に妖界に返してあげるからね…」
「…ああ」

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