第5章 土御門の落ちこぼれ
九威那を拾ってから5日程が過ぎた。千音の力と相性が悪いのか治療がなかなか進まず、現在に至る。
「じゃあ学校いってくるけど大人しくしててよ?」
『ああ、分かっている』
「昼ごはんとおやつは机の上においてあるからね」
『ああ』
「誰かがチャイムならしたり訪ねてきても絶対に出ちゃダメよ?」
『ああ…ってしつこいぞお前!!早く行け!』
「はいはい。じゃあ行ってきます」
九威那が来てからというもの、このようなやり取りが朝の恒例となりつつあった。
(そういえば…治療してて思ったけど、九威那って妖にしては治癒力が低くないかしら?)
妖は人間に比べて格段に治癒力が高い。本来ならばそろそろ問題ないくらいに癒えていてもおかしくはないだろう。
(人間界にいるから…?それとも他に何か問題が…)
あるとすれば何だろうか。
何かしらの理由で妖力の制限を受けている…?それとも、あの場所に倒れる前にどこかに住み着いていた悪妖から呪いを受けていた…?
考え出したらキリがない。しかし、彼自身曰く妖狐族の族長だと言っていた。妖界では今頃大騒ぎになっているかもしれないし、早いところ妖界へと戻してやりたい。しかし、今の状態で返すのも気が引ける。
「あーもう…!原因がわからないんじゃ進めようがないじゃない!」
「なーに悩んでんだよ」
「ふぁ!?…ってなんだ、ハルか」
「なんだとはなんだ。まさかとは思うが…また妖絡みか?」
「……別に」
「お前って相変わらず嘘つくの下手だよなー」
「うっさい。おだまり」
コイツは芦屋晴明。陰陽師の家系、芦屋家の次代当主第一候補である。
…そう。この陰陽師の家系である土御門、倉橋、芦屋の三家の中で私だけが落ちこぼれで、次代候補ではあるものの優先順位は一番最後。
(まぁ…今更そんなこと気にしても仕方ないのだけれど)
「んで、今回は何なの?原因がどうのって言ってたけど」
「いーよ。これは手を出した私とあの子の問題だし、何よりハルも次代第一候補なんだから私には関わらない方がいいんじゃない?」