第5章 風呂場の愛
食事が終わると、は早速お風呂に入る準備をした。
着替えの準備をしようとして、ふと気付く。
───あ…下着、変えらんないじゃん…。やだなあ…
少し考えてから、手洗いして濡れたまままた使う事にした。冷たいが仕方ない。
───明日、ダンテ達にお金借りて買って来よう。
そう心に決めながら、シャワー室へ向かった。
シャワー室へ行くためにリビングを通ったが、バージルは自室にいるようで姿が見えない。
ソファではダンテが足をはみださせて寝転がっているのが見えた。
足音を立てているのに、気付く様子がない。
───寝てるのかな?
起こさないよう慎重に歩いて、そっとバスルームへのドアを開けようとしたが。ちらりともう一度見たダンテが上半身裸でコートを脱いで寝ているのに気付き、赤くなった。
ダンテのコートを急いで持ってくると、上にかけてやる。
───もうっ! 何で洋服あるのに着ないのさ!
コートをかけると、一拍遅れてダンテの香りがふわりと舞い上がった。この香りは嫌いじゃない。
はふっと微笑むと、顔にかかったダンテの銀髪をそっとどけてやった。
無造作にソファに投げ出された長い足。寝違えそうだと思いながら離れる。
再びシャワー室へ戻り、なるべく音を立てないようにしてドアを閉めた。
ドアが閉まった音を聞くと、それまで眠っていたかのように見えたダンテが目を開けた。
───別に寝てたわけじゃねぇんだけどな…。まぁ、いいか。
ダンテは、がかけてくれた自分のコートを手に取った。
───全く優しいな、は。
その優しさが心地よくて惹かれる。
バージルだったら絶対かけてくれねーもんな。放って置かれるか叩き起こされるかのどっちかだぜ。
さりげない小さな気配りが心を温める。ダンテはコートをかけ直した。
それから、が出てくるまでここにいようと、また目を閉じる。