第10章 暗い月夜
家の近くまで来た私の目に奇妙な光景がうつった。家の前で俯いて立っているイタチと蹲っている三人の影、その横に立っている父の姿、
その三人はクーデター急進派であるイナビ、ヤシロ、テッカであることが近づくにつれて分かった。
「俺の器は、この下らぬ一族に絶望している」
この場面は“前”に見たことがある。
「一族などと...ちっぽけなモノに執着するから、本当に大切なモノを見失う...本当の変化とは規制や制約...予感や想像の枠に収まりきっていてはできない」
「傲慢なことを...」
傲慢...
父は、イタチの必死な叫びを傲慢という言葉だけで片付けようとしているのか..
「もういい!それ以上、下らぬ戯言を言うなら牢につなぐ」
その言葉に、私は走りだし、イタチと父達の間に割って入った。
「!、ツバキ!」
「姉さん!」
『...何事ですか?』
出来るだけ冷静に聞く、が、頭の中は怒りでグチャグチャだ。
なぜ、そんな事が言える。父さんにとっては、家族の繋がりより、一族の繋がりの方が大事だというのか..
「ツバキ!昨日何故会合に来なかった!!」
ヤシロが私に向かって叫ぶ。
『暗部の任務がありました。行けなかったのは申し訳ないと思っています』
「何の任務だ!?」
ため息が出そうになった。父も、この人達も...
愚かな質問ばかり..
『...色の任務です、私以外に行く人がいませんでした。大名の相手をして来ました』
私の言葉に声を失う三人。
イライラする...
『で?、何故ここで言い争いを?』
ハッとしたようにテッカが叫ぶ。
「見投げした、うちはシスイのことだ」
『.....は?』
「!」
後ろのイタチが反応したのが分かった、今さっき帰ってきた私はシスイが死んだことは知らないため、もし、シスイが死んでいたら、自分がどんな反応をするか...
『シスイ...が?』
呆然と立ち尽くす私にイタチが後ろから手を握ってきた。
演じるんだ...
ここで、シスイが生きていることがバレてしまってはいけない...
父やヤシロ達、イタチにさえも...