第4章 お狐さんと
意識が戻ると初めに狐誉さんに出会った白いもやの中にいた。服もきれいな状態で、もしかして夢だったのではと思ったがあんな生々しい夢を見るはずがなく顔を赤らめる。隣には誉さんがいて、正面には狐誉さんが立っていた。
「気が付いたか、では立ち去るがよい」
「え…」
「私は生憎人の物に手を出す趣味はないからな」
そう言って肩をすくめながらも狐誉さんは私を引き寄せた。
「…!」
「だがこの人間に愛想を尽かしたのならいつでも私の元へ来るといい。お前ならいつでも歓迎しよう、いづみ」
「あ…」
そして狐誉さんは私の額に口づけを落とした。
「…!キミ!」
「くくく…嫉妬深い男は嫌われるぞ?ほれ、鳥居を抜ければ現世だ。さっさと娘を連れていくがよい」
くつくつと笑う狐誉さんに誉さんは眉を寄せたが、私の肩を抱いて鳥居の方へ歩いて行った。振り返ってもそこにはもう狐誉さんの姿はなかった。鳥居を抜けると景色が戻り、私たちは境内の真ん中にいた。木々は緑が色づき、じりじりとセミが鳴いている、元いた神社の光景だ。