第22章 僕だけの青いイチゴ ( 月島 蛍 )
試着室に入った城戸さんを待つ間、何気なくスマホを見て、山口からのLINEが来ていない事でやっと諦めたかとため息を漏らす。
それはそれで、明日部活の時に山口からしつこくまとわりつかれる事を思えば、ホッと出来る事ではないんだけどね。
『···どう、かな?』
カーテンを引く音がして、振り返る。
そこには、当たり前だけど僕がチョイスした服を纏う城戸さんが立っていて。
「ま、悪くはないんじゃない?」
ホントは良く似合ってると思うのに、そんな感想を伝えてみる。
だって、その方が僕らしいデショ?
「ただ···この当たりが大きく開いてるから···」
スルッと指先で首元を撫でて、近くに飾ってあるスカーフに手を伸ばした、その時。
「ねぇ大地?あれって月島じゃね?」
「えっ、どこどこ?」
日頃からよく聞き慣れた声に、思わず鏡越しで姿を確認する。
チッ···
手早くスカーフを掴み取り、城戸さんを押し込みながら僕も一緒に試着室へと入り込んだ。
『つ、つつつ月島君?!』
慌てて声を出す口を手のひらで押さえながら、視線だけで今は喋るな、と言葉を送った。
菅「あれ~?いま月島がいたと思ったんだけどなぁ」
澤「単なる人違いとかじゃないのか?」
旭「今日は一段と人が多いから、きっと似たような人とかだったんじゃ···」
残念ながら、僕本人ですけどね。
別にやましい事をしている訳でもないし、見られたら困る様な関係性でも、ない。
単に、いま同じ時間を二人で過ごしているっていう事を、あの3人に邪魔されたくなかっただけ。
もし見つかってしまえば、せっかくだからお茶でもど?なんて声を掛けられるに違いないだろうから。
菅「そっかなぁ?もし月島だったら、どうせ一人か山口と一緒だろうしお茶でもどう?とか誘ってみようかと思ったんだよね」
···ほら、ね?
隠れて正解だろ。
きっちり閉められたカーテンに隙間を作り、3人がいなくなるのを様子見て、早く立ち去ればいいのになんて、毒付く。
『あの、月島君···』
口を押さえた僕の手から逃れ、顔を真っ赤にして城戸さんが僕を見上げる。
「あぁ、ゴメンゴメン。ちょっと面倒な人達がうろついてるからさ···それとも、僕がキミを襲うとでも思ったの?」
『えっ?!そんな事は!』