第21章 赤鼻のサンタクロース ( 夜久 衛輔 )
お帰りなさい!ってパタパタと玄関まで迎えに来て。
お風呂にする?先にご飯食べる?
···それとも?
恥ずかしがりながら、それとも···の続きを言わない紡が脳裏に浮かんで···
待て待て!
なんでイメージが新婚さんなんだよ!!
なに、考えてんだよオレ!
浮かび上がる妄想を追い払うように頭をブンブンと振ってみる。
『やっくん、なんか顔が赤いけど大丈夫?もしかして風邪とか?』
麺をすくい上げながら、紡がオレの顔をひょこっと覗いて来た。
「あ、いや何でもないよ。店内が暖かいから、かな?なんて、アハハ···」
『そう?厨房はわりと寒いから、ホールに出るまでは暖かさはあんまりわかんないけど···でも、風邪じゃないなら良かった。はい、やっくんの出来た』
厨房、寒いのか?
こっち側はこんなに暖かい感じがするのに。
ペーパータオルで手を拭く紡を、何気なく見つめる。
きっと、手荒れとか気にしてるんだろうな。
こないだ一緒に帰った時も、ハンドクリーム塗ってたっけ。
しかも、何度も。
「あのさ、紡」
黒「お~い、オレら会計終わってんだけど~?」
このタイミング···クロのヤツ、絶対わざとだ。
『やっくん?』
「···会計してくる」
トレーを持ち上げ、そのままレジへと向かう。
ー いらっしゃいませぇ ー
くそっ···コイツが付きまとうチャラ男か?!
いや待てよ?
それとも、アッチのヤツか?!
レジや厨房にいる人に軽く不機嫌な表情を向け会計をしていると、その姿さえクロはニヤニヤしながら見てくる。
「クロ、何度も言うけどな···」
黒「紡、お前もう少しでバイト終わるんだろ?」
『え?あ、はい···あと30分くらいかな?』
クロが声を掛けると、リエーフの頼んだおいなりさんを作りながら時計を振り返り紡が答えた。
黒「んじゃ、待ってっから一緒に帰んぞ」
そうそう、一緒に···えっ?!
なんでクロが?!
『えっ?!』
そうだろ、紡だってそう思うよな?
そんなオレの考えを読んでかどうか、またもクロはニヤリとオレに憎たらしい笑いを向ける。
黒「一緒に帰んぞ、送ってくから」
『あ、はい。じゃあゆっくり食べてて下さい?』