第14章 流麗な夢をキミと ( 菅原 孝支 )
ー 楽しい夢の時間をありがとうございました ー
「それは何よりで御座います。では、お嬢様・・・今日の記念にこちらをお受け取り下さい」
そう言って入口に飾られている花瓶から、一輪の花を取っては、そっと手渡す。
ー 白い・・・バラですか? ー
「お嬢様の、お好きなお色にお染め下さい」
あくまでも微笑みを絶やさずに、そして背筋はのばしたまま。
ー ・・・はい。ありがとうございます・・・ ー
「では、行ってらっしゃいませ、お嬢様」
丁寧にお辞儀をして、夢の世界から現実の世界へと踏み出すまで・・・その姿勢を崩さない。
・・・これがオレは何より恥ずかしい!
一歩間違えたら執事じゃなくてホストだよ!
大地も旭も、よく抵抗なく出来たな・・・
それからも順番に入口に立つ事、3回目が回って来て。
「行ってらっしゃいませ、お嬢様・・・」
最後のお嬢様をお見送りすると、花瓶の花も遂になくなり予定より少し早く執事カフェが終了した。
オレは大きく息を吐いてからドアを静かに開け、外に〖 CLOSE 〗の札を付けてから、またドアを閉めた。
『みなさん、お疲れ様でした!』
紡ちゃんがニコニコしながら言うと、やっと終わった・・・などと言いながら息を吐いた。
澤「見事なまでに女子しか来なかったな」
縁「そうですね・・・執事って仕事がこんなに大変だとは・・・」
西「でもよ、力は何気に向いてんじゃねぇ?」
縁「・・・勘弁してくれよ」
西谷が言うことも、分からなくもないな。
どんなタイプの女子が来ても、縁下は卒なくこなしていたし。
手が空いてる時はさり気なく周りのフォローをしていた。
特に・・・影山と月島。
影山は最初から最後まで表情が固まっていたし、月島に至っては軽く毒を吐くこともあった。
清「早く終わったし、ひと息ついてから片付けにしましょう」
「そういえば、結局メイドが活躍することなかったよな。来たのはみんな女子達だったし」
せっかく可愛いメイド姿をしてたのに・・・と付け加えると、紡ちゃんは清水と顔を見合わせて笑った。
『それでいいんですよ。私達は執事として頑張る皆さんのお手伝いなんですから。それに、今日の主役は元々みなさんですから。ね、清水先輩?』
清「そういう事」