第14章 流麗な夢をキミと ( 菅原 孝支 )
『スガさん、お願いします』
用意が整ったトレーを見て、チリーンとベルを鳴らすと、縁下がそれを受け取りに来る。
「お嬢様方のご様子は?」
縁「・・・夢のような場所だと、お話されておりました」
縁下の言葉を受け、紡ちゃんが口元を緩ませる。
執事とお嬢様設定は、乙女の夢です!
そう力説していた姿を思いだす。
「お嬢様がお出かけになるまで、縁下、しっかりお仕えする様に」
縁「心得ております」
胸に手を当て、縁下が答えた。
少しの会話でも現実が見えないようにと、出来る範囲で構わないからキチンと話して欲しいという指示に従い、なりきるオレ達。
まぁ、縁下は元々・・・物腰が柔らかいところがあるから、言葉遣いを変えるだけでも役になり切れてるってところかな?
問題なのは・・・
蝋人形の如く顔が固まっている影山。
それとは反対に、落ち着きがない日向。
日向とは違う感じでソワソワしてる山口。
あからさまに不機嫌で無表情な顔の月島。
頼むよ1年・・・何とか乗り切ってくれ。
澤「お嬢様のお帰りでございます」
チリーンとベルが鳴り、大地がオレに合図をする。
「お帰りなさいませ、お嬢様・・・」
うわ・・・道宮・・・女バレのヤツとふたりで来たのか。
道「さ、澤村が・・・お嬢様っ、て・・・それに菅原まで・・・」
見るからに笑いを堪えているのが分かり、思わず眉がピクリと引き攣る。
「お帰りなさいませ、お嬢様。お席までご案内致します。どうぞ、こちらへ」
道「菅原が・・・なんか変・・・」
道宮・・・うるさいよ。
次にお客が来たら旭の所に・・・って思ったけど、相手が道宮だからなぁ。
仕方ない、誰か他の所に・・・と、思っても。
・・・1年組、アレだしなぁ。
とは言え、道宮なら多少の失敗なら笑ってくれるだろうから・・・ここは山口に腹を括って貰おう。
ゆっくり案内しながら、山口に視線を送るとあからさまにビクッとされる。
・・・とてつもなく、不安だ。
ひとりで3人に務めている縁下が、あまりにもスマートに対応しているから・・・余計に、不安だ・・・
オレが一緒についてもいいけど、案内役のオレが抜ける訳にも・・・そうだ!
山口のテーブルに案内しながら、チラリと西谷に合図を送る。
西谷なら・・・