第1章 真夏のカーディガン
紗奈は、日に日に笑わなくなって行った。
俺の前では無理に笑って誤魔化すが、そんなニセモノの笑顔なんてすぐに見分けられる。
「紗奈、今日俺ん家来ない?」
無理を承知で言ってみた。
「………………いいよ、久しぶりに孝支のとこ遊び行く♪」
ニセモノの笑顔で紗奈は笑ってみせた。
二人で歩く久しぶりの通学路。
誰もいなくなったのを確認してから、紗奈の手を握った。
紗奈は嫌がる素振りをみせる訳でもなく、俺の手をそっと握り返してくれた。
いつぶりだろう。
俺たちは、部屋に入るまでその手を離すことは無かった。