第3章 この子うちに泊まる気だ
確かにね、出会い頭に彼の股間を蹴ったのは申し訳ないし、だからこそ今まで我慢してきたわけだけど。
「デリカシーなさすぎ!! それに遠慮しなさすぎ!! 言っておくけど、ここ私の家なんだからね!! もっとお客としての自覚を持ってよ!!」
言ってやった、言ってやったぞ!
少し言いすぎた気もしなくもないけど、いや、今までのやつの態度からすればこのくらいは言ってもいいはず。
鼻息荒く自分の行動に悦に入っていると、舌打ちが聞こえた。
「…………うるせーな、だいたいこんな場所、俺は好きで来たんじゃねーんだよ。それに布っ切れ見られたからなんだ? それ見て俺が興奮するとでも思ったのか? 自意識過剰にもほどがあんだろーが」
低い声が響いたと思った時には、私は天井を見ていた。
遅れて背中に鈍い痛みが走る。
え?
「ムカつくんだよな〜。そうやって楯突いてこられると」
スッと私の首に手が伸びる。
ゾワリと背筋が凍った。
反射的に足を振り上げようとしたが、彼の足が乗っかったことによって少しジタバタしただけに終わった。
自分に覆いかぶさる影に目線を上げると、今まで不機嫌な顔しかしてなかったのが嘘みたいに、やつは楽しそうな顔で口角を上げていた。