第26章 【先輩】×【初デート】
「じゃ、そろそろ行くね。」
またね。と言って友達に手を振ると、先輩との待ち合わせ場所へと向かう。
初めてだから、すごくドキドキする。
「…あ。」
遠くからでも見えたその姿は、すぐに先輩だと分かった。
急ぎで走って向かうと、先輩は少しして気が付いて優しく笑った。
「遅くなってすみません…。」
「気にしないで。俺が来たのが早く来すぎちゃっただけだから。
雨衣は悪くないよ。」
「でも…本当にすみません。つい友達と話し込んじゃって、」
申し訳なくて何度も頭を下げる。
「頭、あげて。周りの人も見てるし…」
その言葉に気付いて急いで顔を上げる。
すると本当に、周りにいる何人かがこちらを見ていた。
「す、すみません…。」
「そんなに謝らないで。本当に俺、気にしてないから。それより、早く行こう?」
「あ、はい!」
気にしてない。と言う言葉も、
先輩のその優しい声も優しい笑顔も、私を安心させる。
「よし、着いた。」
先輩の後をただ着いて行ってすぐ、目的の場所に着く。
「映画館?」
「うん。少し考えたんだけど…この間、観たい映画があるって言ってたから。」
「あ、はい!…でも、蒼依先輩は良いんですか?」
「俺は合わせるよ。基本どんなのでも見れるから。」
本当に私が行きたい方で良かったのかと少しだけ悩んだけど、
先輩の言葉を信じて、2人で私が見たかった映画を見ることにした。
「面白かったですね!映画館でちゃんと見れて良かったです。
蒼依先輩は、どう…でしたか?」
私は確かに面白かったし、緊張も忘れるくらい見入ってしまったけど
先輩はどうだっただろうか。つまらなくなかったかな。と少し不安になる。
「…あ、うん。すごく面白かったね。」
先輩は優しく笑うと、私にそう言った。…けど、どこか気になる。
折角の初デートなんだから、先輩も楽しめないと意味が無いのに。
私ばっかり楽しんでしまっているようで、何だか凄く申し訳ない。
「それにしても、お腹空いたなぁ…。何か食べたいものとかある?」
「…私は…特には。」
「そっか。」