第20章 【初恋の人】×【再会】
私が1人、カフェに居ると、
「市倉?」
聞き覚えのある、懐かしい声がした。
聞きたくなかったその声は、こっちに近付いて__
確かに、もう一度私の苗字を呼んだ。
「…市倉。久しぶり。前、良いか?」
「…あ、うん。」
質問に答えを返すと、彼はふにゃ、と柔らかく笑って私の前に座った。
すごく懐かしくて、それと同時に、少し怖くて。
ふと、合った目を持っていた本の方へ逸らす。
「…久しぶり…。」
そんな様子に気付かない彼は、
「…元気そうだな。」
なんて、私に言った。
少し沈んだような声に、なんて返すべきなのかも分からず、
つい聞いては行けない事を、聞いてしまった。
「…あの子は元気?」
「え、?」
一瞬にして、時が止まった気がした。
彼は、酷く驚いた顔をした後 少し笑った、
「元気だよ。あいつ、最近結婚したんだ。」
その口調から、その相手が彼では無いことは馬鹿な私にも分かった。
少しの間、信じられなかったけれど。
彼とあの子は幼馴染で、いつも言い合いばっかりしてて、
でも仲が悪いからとかじゃなくて、
仲が良いからこそのやり取りだと、分かっていた。
それに、みんな、2人は付き合っていたんだと思っていた。
でもそんなことは無くて。
私があの子の話をした時の表情から見て、きっと彼の片想いだったんだろう。
_あの頃の私のように。